2014/06/28

科学と傭兵と言葉と噂

積読本解消ノ記録、其ノ弐。


まずは、「日経サイエンス 2014年07月号」から。既に08月号が出ていますが、なんとか1ヶ月遅れまで遅れを挽回してきました。
シュレック」でフィオナ姫が髪を後ろで束ねる髪型を好む理由は、ほどけたロングヘアの3次元描画に要する計算が非常に複雑なためとか。コペルニクスによって提唱された地動説が、他の科学者たちになかなか受け入れられなかったのは、当時(16世紀)の観測事実は地動説とは別の理論を支持していたからとか。かのティコ・ブラーエ(Tycho Brahe)の影響も大きかった模様。

「Tycho Brahe, the scandalous astronomer - Dan Wenkel」(TED-Ed)



傭兵ピエール」佐藤賢一(集英社)は、コペルニクスよりも1世紀近く前に活躍したジャンヌ・ダルク(Wikipedaの「15世紀のフランス王国の軍人」という説明はなんとなくシュールです)に付き添う無頼の傭兵隊長ピエールを主人公にした歴史小説。既に、文庫化、漫画化、さらには宝塚化もされているようです。まぁ、話が少々出来過ぎですが、百年戦争終盤頃のフランスというのがイメージしやすくなりました。




ジャンヌ・ダルクは神の言葉を伝えましたが、コピーの言葉を伝えるのは「言葉の技術 思いつくものではない。考えるものである。」磯島拓矢(朝日新聞出版)です。傭兵ピエールに比べて薄くて字が大きくて余白も広いので、サクッと読み終わりました。タイトルの通り人に伝わる言葉は、思いつきで出てくるものではなく、伝えたいこと/伝える相手/競合/社会環境など、きちんと分析して考えるものだということ。当たり前といえば当たり前ですが、何も考えずにブログを書いている身としては、耳が痛いです。


広告コピーのようにマスを対象にするのではなく、人から人へとパーソナルな関係性を通じて広まるのが「うわさ」という言葉です。しかし、今ではインターネットの登場によって、パーソナルをパブリッシュ(publish)可能になってしまっています。「うわさとは何か - ネットで変容する『最も古いメディア』」松田美佐 (中公新書) では、「うわさ学(?)」の歴史を説き起こすところから初めて、これからの社会での情報との付き合い方を考えました。




しかし、このペースでは積読本がなくなるまで2年以上かかってしまいます。とりあえず、3三箇月のアマゾン&ブックオフ禁止の刑を自己宣告しておきましょう。

2014/06/21

パンとコーヒーと牛乳とタマゴとキウイと数学

積読本解消ノ記録、其ノ壱。

 まずは「珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を岡崎琢磨(宝島文庫)から。最近流行り(?)の、連作短編を繋げての長編ミステリィです。アマゾンでの評価はあまり高くないようですが、私は楽しめました。コーヒーと京阪電車が好きな方にはお勧めです。難を言えば、叙述トリックを最後に持ってきたために、ミステリィとしてはどうしてもアンフェアな印象が拭えません。まぁ、好みの問題ですが。

さて、「カフェ、それは悪魔のように黒く、地獄のように熱く、天使のように純で、まるで恋のように甘い」とのたまったフランスの政治家シャルル=モーリス・ド・タレーランですが、メートル法成立のきっかけを与えた人物でもあるようです。その他、数学史にまつわる興味深い話が色々読めるのは「数学は歴史をどう変えてきたか: ピラミッド建設から無限の探求へ」アン・ルーニー(訳:吉富節子)(東京書籍)です。

 宇宙の真の姿を解明するために人間が生み出したツールが数学だとすれば、牛乳とタマゴは人間の知恵と執念がつくりだした食品です。「牛乳とタマゴの科学 完全栄養食品の秘密」酒井仙吉(講談社ブルーバックス)によれば、特に20世紀に入ってから品種改良が進み乳牛1頭あたり平均約8トン/年の牛乳を出し、鶏1羽あたり平均280個/年のタマゴを産むという、俄には信じられないような生産効率になっているようです。日本では、江戸時代までは牛乳とタマゴは一般的な食品ではなかったようですが、明治以降少しずつ消費が拡大し、戦後、学校給食を通じて一気に消費が拡大したようです。1950年代以降、日本人の体格が大きくなったのは、不足していた動物性タンパク質とカルシウムが十分に供給される様になったからなんですと。

 主食を忘れていました。「真夜中のパン屋さん 午前0時のレシピ」大沼 紀子(ポプラ文庫)です。大人も読める少女小説という評価もあるようですが、私のようなオジサンが読んでも、それなりに楽しめました。内容とは無関係ですが、京阪の淀屋橋や枚方市の駅ナカの神戸屋で夜のタイムサービスに上手くタイミング合うと、ちょっと嬉しくてついつい買い過ぎてしまいます。真夜中のパン屋さんって、もしかしたら本当に需要があるのかもしれません。

最後はデザートに「キウイγは時計仕掛け Kiwi γ in Clockwork」森博嗣 (講談社ノベルス)を。イニシャルV.C.さんが出ていませんが、同窓会的ファンサービスの1冊ですね。単に四季に繋がるルートが消されていっているだけのようしか思えず、どんな伏線が張られているのか想像もつきません。残り3冊でどう纏めるのか?纏める気がないのか?Xシリーズとの関係は?著者によれば「このあと、また少し時間があきます。」とのことなので次作はいつになることやらです。