2010/05/12

なぜスケジュール通りに進まないのか?

(1)不確定要素が多い
(2)スケジュールは確率分布
(3)雪球効果

(1)不確定要素が多い
そもそも正確な見積りを行うには、どのような作業が必要なのかがわかっている必要があります。単純に考えれば、
・要求が定まらなければ、仕様も定まらず、
・仕様が定まらなければ、設計ができず、
・設計が完成しなければ、実装作業も見通せない
筈です。
しかし、プロジェクト開始時には、場合によっては要求すら曖昧なことがあります。そのような状態で見積りとスケジュールを作成するのは、目隠しされた状態で遠距離射撃を行うようなもで、的に的中することは、殆どありません。信憑性は定かではありませんが、ある調査によるとプロジェクト開始時の見積りは、平均で400%もの誤差があるとのことです。プロジェクトが進むにつれて、目隠しがとれてきたり、的までの距離が近づいくるので、正確なスケジュールが引けるようになります。

(2)スケジュールは確率分布
射撃の喩えで考えれば、ある一定の視界と距離の状態での着弾予想は、例えば以下のようになるでしょう。
・的を射抜ける確率 : 30%
・的を中心とする半径1メートル以内に着弾する確率 : 70%
・的を中心とする半径3メートル以内に着弾する確率 : 95%

スケジュールも射撃と同じで、例えば、
・9月末に終了する確率 : 30%
・9月末±1週間で終了する確率 : 70%
・9月末±3週間で終了する確率 : 95%
のようにしか本来は表現できないはずです。
この例では、70%の確率でスケジュール通りに作業が進まなくなります。
100%完全無謬なスケジュールなど望むべくもありません。プロジェクトのスケジュールが、どの程度の確率で達成できる見込みで、どの程度の誤差を見込んでいるのかということについて、プロジェクトの利害関係者全員が、共通の認識を持つことが大切になります。

(3)雪球効果
スケジュールの構成要素である個々の作業見積りも、同じ理由で確率でしか表せません。個別の作業は基本的には独立した事象です。従って、例えば個々の作業の見積りが90%の精度であったとしても、独立事象の作業が10個存在すれば、全て見積り通りに進む確率は90%の10乗、つまり35%未満にしかなりません。プロジェクトのスケジュールは放っておくと、現実との乖離が雪山を転がるボールのように、どんどんと大きくなっていきます。

参考図書
「アート・オブ・プロジェクトマネジメント ―マイクロソフトで培われた実践手法 」Scott Berkun, (O'REILLY Japan)

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