2010/04/19

ITエンジニアにとっての教養

教養主義の没落が叫ばれて久しいですが、この数年来、再度「教養」がスポットライトを浴びています。実用性無視の人格陶冶、あるいは受験エリートの自己正当化の手段としての教養主義ではなくフラットな21世紀を生きるうえでの基礎体力としての教養が求められているのでしょう。

しかし、教養の定義は曖昧です。人間性や行動の品格までをもその射程に置く言葉です。ここでは、道徳面には踏み込まずに、ITエンジニアにとっての実利という観点で、教養とは何かについて、考えてみました。

(1)ストックとしての教養

(a)深い知識
(b)広い知識

(2)フローとしての教養

(a)継続学習への意欲
(b)新たな知識を生み出す力

(1)ストックとしての教養

(a)深い知識
  • 自らの専門分野について体系立った深い知識を有していること
  • ドイツの影響を受けた旧帝大系の教養。
  • ITエンジニアにとっては、ITやプロジェクト管理の知識
(b)広い知識
  • 専門分野に関係なく、科学・文学・音楽等の幅広い知識
  • 所謂リベラルアーツ、アメリカ的教養、旧制高校的教養

(2)フローとしての教養

(a)継続学習への意欲
  • 学び続ける力。
  • 知的好奇心、無知の知、好きこそものの上手なれ
  • この宇宙の全知識をストックすることはできない
  • その時々で必要な知識を学び続ける必要がある
(b)新たな知識を生み出す力
  • 特定の問題を解決するために知識を現実世界に適用する
  • 知識を深める新たな発見をする
  • 既存知識体系の溝や矛盾を乗り越えるパラダイムを考案する
  • 複数分野の知識をマッシュアップして、新しい応用を行っていく
  • 暗黙知を形式知に転換する
  • ITエンジニアで言えば、
    • プロジェクトの問題を分析して改善策を考える
    • プロセスをカスタマイズして適用する。
    • 成功・失敗事例をポイントを捕らえてドキュメント化する
    • 顧客の要求を実現するための技術の組み合わせを提案する
    • etc...

まとめ

ストックとしての知識がなければ、新しい知識を生み出すことは非常に困難です。さらに知識はどんどん陳腐化していくので、常に学び続ける必要があります。教養人目指して頑張ります。

参考図書
 「グロテスクな教養」高田里惠子(ちくま新書)
 「大人のための『学問のススメ』」工藤庸子、岩永 雅也(講談社現代新書)
 「教養主義の没落―変わりゆくエリート学生文化」竹内洋(中公新書)

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